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「いたこ」
 死んだ人間が生き返って恋人と再会する。そんなストーリーの映画や小説が近頃やけに持て囃されています。西洋でも「交霊術」というのは昔からあり、中世ヨーロッパでは特に貴族の間で交霊会が行われていた様ですが、ここ日本にも独特な「いたこ」と呼ばれる霊能者が居ます。「いたこ」とは東北地方特有の盲目巫女のことで(中には盲目でない人も居るが)霊界と人間との媒介者として自分自身に霊を降ろし、「口寄せ」をすることを生業とする人々のことをいいます。しかし現在ではこの「いたこ」になる人が激減しており、100年前は500人以上いた「いたこ」も現在ではわずか10人程度しかいない様です。まさに絶滅の危機に瀕しているのです。

 「いたこ」のメッカは青森県にある恐山という所です。そこでは各いたこが簡単な小屋の中にすわり、そこで口寄せをして欲しい人々が順番に自分の会いたい人の霊をいたこ自身に降ろしてもらいます。先程も述べたとおり、いたこの数は今や激減の一途を辿っていますが、霊との交流を持ちたい人は沢山居ますから、日本全国からこの恐山にやってくる人は後を絶ちません。多い日は何百人もの列が出来る事もあり、待つのも大変です。しかし不思議な事に長いこと待たされても会いたかった死者に会って話が出来ると皆足取りも軽やかに笑顔で恐山を後にするそうです。

 口寄せの際、いたこは大抵死者の生年月日と命日を最初に尋ねます。実際に交霊をした人の話によると、家族しか知らない秘密を話したり、話し方の口癖が本人そっくりだったりするそうです。とても興味深いですね。中には毎年死んだ子供に会いに恐山を訪れる人も居るらしく、死後の世界で幸せに暮らしている事を確認すると安心して帰って行くそうです。気になる口寄せ料ですが、一霊3000円程との事です。中には五霊も降ろしてもらおうという欲張りな人もいるらしいですが、その気持ち分からなくもないです。

 いたこに盲目の人が多かった理由としては、盲人は概して目以外の感覚が敏感である事も挙げられるかも知れませんが、何といっても今より貧しかった昔の日本において、女性の盲人が生計を立てる事は今の私達が想像する以上に困難であった事が挙げられます。実際にかつての津軽地方では盲人女性の殆どがいたこを生業として選択したといわれています。

 忙しい現代では、盆やお彼岸のお墓参りを欠かさず行いたいと思ってもなかなか実現出来ない人も多いと思いますが、毎日の生活を見守っていてくれるご先祖様への永遠の謝意は今も昔も変わりない・・・と信じたいものです。



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