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「青色発光ダイオード」

 世界で初めて青色発光ダイオード(LED)を実用化した中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授が1999年まで勤務した日亜化学工業を相手に特許権を譲渡した対価の一部として二百億円の支払を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。三村量一裁判長は「会社に技術の蓄積がない中、原告が独力で青色LEDを発明した」として、日亜化学が特許の独占で得る利益の半分にあたる約604億円を発明の対価と認定し、請求のあった二百億円の支払を命じた。
 これはある意味画期的な判決と言える。終身雇用制を雇用関係の基盤とし、年功序列の縦社会である日本において、社員が個人の上げた業績に対して直接の対価を求めることはまれであり、メディアも概ね好意的に受け止めている。ただ筆者は個人的にこの判決に疑問を抱かざるを得ない。第一の理由は、社員の公平性に対する問題。例えば本件は技術系の社員に与えられる特権であり、文科系の社員、例えば営業職にいる人間が画期的なファイナンススキームやビジネスモデルを構築し、大手顧客と大口の取引を成約したとしても、社員としての処遇や昇進面で考慮されることはあっても、このように、会社の得た利益の半分を対価として要求し認められる可能性は殆どゼロに等しい。二番目の理由は、金額の妥当性の問題。判決では「日亜化学には技術情報の蓄積も援助するスタッフもいない貧弱な環境の下、世界的な発明をしたまれな例」としているが、根本的な誤解は、中村教授が少なくとも終身雇用を保証されたノーリスクの安定した環境の下でこの発明を成し遂げたことだ。仮に中村教授が一年毎に業績に基づいて雇用契約を更新する契約社員であれば相応の対価を得ることに対し筆者も異存は無い。しかし今回、中村教授は幸いにもこのような発明に成功しクローズアップされたが、不発に終わっているケースが殆どで、会社側にしてみれば、リターンを得られる保証も無い中、数多くの技術者の生活を自らのリスクアンドアカウントで保証しているのであり、それを考えれば、社員の発明の成果は会社に帰属すると見るのが妥当であろう。
 今回の件でメディアを含め、多くの日本人の価値判断の基準となっているものは、米国の技術者は今回の中村教授の様に自らの発明に対し莫大なリターンを得ているのではないかという誤解にある。しかし現実には終身雇用制ではない米国においても、社員の権利については、会社との雇用契約で細かく既定されており、社員の発明の成果は会社に帰属するという考え方が一般的である。今回の件で、日亜化学は恐らく上告するものと見られるが、最高裁がどのような判決を下すのか注目される。 (終)


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