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「学生野球スターをめぐるスキャンダル」

 今年のプロ野球ドラフト会議の目玉である一場靖弘投手(明治大学4年)の獲得をめぐり巨人、阪神、横浜各球団のスカウトが同投手に合計二百数十万円の現金を渡していることが明らかになり、各球団のオーナーを含む球団幹部6名が辞任、あるいは解任されるという大問題に発展した。
日本プロ野球界の抱える諸問題については前回のコラムでも触れたが、本件も氷山の一角に過ぎず、今回の事件が唐突に明るみになった背景には右翼団体からの圧力や内部告発があるといわれており、そのこと自体現在のプロ野球界が既に自浄能力を失っているあかしであると言わざるを得ない。辞任にあたり阪神の久万オーナーが、「今のドラフト制度を早くウェーバー制にすべき」などと現行の制度を批判したとされるが、現金授受以前ならまだしも既に不正を行ったあとでは説得力に乏しく、自分の置かれている立場に対する認識の甘さと責任感の欠如は推して知るべしである。

 ところで一方の当事者である一場選手に対しては意外にもメディアの報道も全体的に同情的であり、どちらかというと被害者として扱われてさえいることに違和感を覚えるのは私だけであろうか。その理由は恐らく、@有力選手に対する同様な行為が日常的に行われている中で、同選手のみが不利益を蒙るのは不公平である。A受領した金額が比較的小額であり制裁には値しない。B彼は卓越した才能の持ち主であり、その才能を発揮できる機会を奪ってしまうことは日本球界の損失である。といったところであろう。10月26日に行われた横浜山中球団専務と野崎球団社長の謝罪会見では両幹部が一場選手のプロ入り救済を求めており、一場本人もそれに期待するようなコメントを寄せている。

 しかし待って欲しい。少なくとも彼のとった行動は学生野球憲章への明確な違反行為であり、結果として一部上場企業のトップ2名を含む球団幹部6名の首を飛ばす程の大スキャンダルに発展している。例え彼自身がそれ程事重大性を認識していなかったとしても、事実は事実として重く受け止め、少なくとも今年のドラフトでの指名は辞退するくらいのけじめはつけるべきではないか。日本には文武両道という言葉があるが、私個人としてはファンの憧れるスター選手は人間的にも優れていて欲しいと願う。例えば松井秀樹や宮里藍は卓越したスポーツマンでありながら謙虚さと周囲への配慮を忘れず、プロフェッショナルとしての自覚も兼ね備えた魅力溢れる人間である。一場選手がどれほどの選手なのか知らないが、優れた素質をもった選手であるならば手垢にまみれた閉鎖的な旧体制と一線を画すためにも自分の冒した過ちは過ちとしてきちんとけじめをつけ、それをばねに周囲の期待に応えられるような選手に成長して欲しいと望む。 (終)