English


「ドン・キホーテの挑戦」

 巨大な風車に立ち向かうドン・キホーテの話ではない。日本のディスカウントショ
ップのドン・キホーテが厚生労働省という巨大な敵に戦いをしかけているのだ。ドン・
キホーテは今年の8月から深夜の薬販売を始めた。問題はその販売方法にある。
同社は深夜に薬剤師が不在となる都内の10店舗に限りテレビ電話により薬剤師
の指示を仰ぎながら薬の販売を行うシステムを導入したのだが、日本の薬事法
ではあらゆる薬の販売は薬剤師の常駐する薬局で行わねばならないと規定され
ており、それに抵触すると厚生労働省がクレームをつけたのだ。それならばと、ド
ン・キホーテは9月1日より深夜に限り、腹痛等緊急性の高い客に限り、風邪薬や
胃薬品、鎮痛剤などを一晩分だけ無償提供することにした。これに対し厚生労働大臣は「有償、無償の問
題ではない」と違法性を主張、訴訟に発展しかねない状況に発展している。米国に住んだことのある人なら
ご存知と思うが、米国では24時間営業のGrocery Storeや薬局でいつでも薬を買うことができ、例えば日本
では考えられないことであるが、処方箋に必要な薬であっても事前に電話連絡をしておけば、ドライブスル
ーで薬を受け取ることさえ可能である。 勿論ドン・キホーテは薬を無償配布することを目的にしているので
はなく、実態にそぐわない薬事法の撤廃を求めている。

 規制緩和への波は薬事法に限ったことでは無い。戦後日本は護送船団方式という保護主義的なシステ
ムを官僚主導で産業界に組織的に導入してきた。巨大な外資から国内産業を保護するためにさまざまな
形の参入障壁や強固な同業種間連携等を築き、一方で高学歴社会や終身雇用制度等に由来する企業
への忠誠心がシステムを内側から支えてきた。 高度経済成長時代は当該システムがフル稼動し、日本
経済の発展に大きく寄与してきた。 しかし一方で、共存共栄を旨とする同方式は、新規参入者の排除や
競争原理を惹起させない秩序維持のためのルールで運営されているため、保護されている業界、特に金
融、建設、不動産等の弱体化を促し、官と民の癒着や族議員の台頭、派閥政治の蔓延等の弊害をもたら
してきた。 その結果、自動車や半導体など自助努力によって国際競争力を身につけた産業はいち早く護
送船団を脱する一方、銀行や建設など、行政の手厚い保護を受けてきた業界は破綻し、戦後最悪の不況
の引き金となった。もはや、官主導の護送船団方式への信頼は揺らぎ、各企業は自助努力によりリストラ
を行い、不況を脱すべくもがいている。 嘗て、規制緩和への圧力は外圧によるものが殆どであったが、今
や、自由競争を望む国内からの声が強くなっている。道路公団の民営化や郵政省の公社化、今回の自民
党総裁選挙における派閥の有名無実化等、今の日本全体を揺り動かしている出来事の内側には、ジャパ
ンスタンダードからグローバルスタンダードへの移行を求める大きな波のうねりが息づいているのだ。 (終)



HOME



(C) Copyright 2003- All Rights Reserved.